相対重力@火山 | 京都大学 測地学研究室 風間卓仁

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相対重力連続観測による火山内部の質量移動プロセスの把握

火山活動に伴う短周期の質量移動プロセスを理解するため、私は火山地域で相対重力計による重力連続観測を実施しています。 鹿児島県の桜島ではダイク貫入に伴う10マイクロガル未満の重力変化を検出することに成功しました。

(記事作成:2016年9月3日)
(2016年9月27日更新:受理された論文の情報を追加)
(2017年1月13日更新:受理された論文の情報を修正)

​火山地域におけるこれまでの重力測定

​重力観測は火山内部の質量移動を把握するのに有効な手段の1つです。 これまで火山地域では絶対重力連続観測が主流であり、そこに可搬型相対重力計を併用することで重力の時空間変化が明らかになってきています。 しかしながら、火山地域における従来の重力観測では、(観測精度や観測頻度の観点から)時定数1日未満の重力データの誤差が大きく、どうしても周期数日以上の火山変動しか把握できていませんでした。 しかも、数日以上の時間帯域では陸水流動に伴う重力擾乱が卓越するので、陸水擾乱補正に労力を費やされてしまいます。 一方で、他の火山学的観測によると、火山内部の変動は数秒から数年という広帯域に渡ることが分かっています。 重力観測でこれまで注目されてこなかった「火山活動に伴う時定数1日未満の重力変化」を直接検出することができれば、質量移動の観点から火山活動ダイナミクスをさらに深く探究できると考えられます。


図1 : 重力応答の周波数特性。Hinderer et al. (2007)より。

​桜島で実施している相対重力連続測定

そこで私は、可搬型バネ式相対重力計を敢えて連続観測に用い、火山地域の重力変化を高頻度で測定する研究を行っています。 使用している重力計はScintrex社製の旧式の重力計CG-3Mで、桜島の有村地域(昭和火口の南約2km)に設置しています。 CG-3Mはバネの伸び縮みによる見かけ重力変化(器械ドリフト)が大きいため、振幅の大きいシグナル(潮汐など)を記録する以外の目的で、連続観測に用いられることは多くありません。 しかしながら、器械ドリフトや潮汐に関する適切な補正を行えば、1分間隔の重力値を連続的に得ることができます。 地面振動の小さい日には観測誤差が10マイクロガル未満となり、絶対重力計にも劣らない高精度重力観測を高頻度で行うことができるのです。


図2 : 桜島有村に設置したCG-3M重力計(左)。右には広帯域地震計CMG-40Tを設置している。

​2015年8月15日急膨張イベント時の重力変化

​桜島火山では昭和火口や南岳火口からの爆発的噴火が繰り返し起きていますが、2015年8月15日にはこれまでにない特異なイベントが発生しました。 当日朝から山体が急激に膨張し、半日の間で数センチもの隆起が観測されたのです。 なお、当日は天候も穏やかで重力値のばらつきも小さく、しかも周期半日程度の火山変動となればCG-3Mの特異とする周期帯です。 実際に当日の重力データを解析したところ、当日の正午頃を変動のピークとして約5.9マイクロガルの重力減少が検出されました。 一般にバネ式相対重力計の観測精度は10マイクロガル程度と言われていますが、今回はそれよりも小さなシグナルを捉えたことになります。 しかも、CG-3Mは重力と同時に器械傾斜量(2成分)も記録していますが、当日は山体膨張に伴う傾斜変化も検出しました。 このことは、CG-3M重力計は大規模な火山活動の際に簡易的な傾斜計として利用可能だということを示しています。


図3 : 2015年8月15日に桜島有村で観測された相対重力変化

​噴火直前直後の短周期的な重力変化

​桜島では噴煙高3000mを超える噴火がしばしば発生していますが、このような噴火の前後における火山内部の質量移動プロセスは未だ十分には分かっていません。 そこで私は、指導学生の栗原剛志さんと共に、噴火前後における相対重力変化の傾向を調べました。 その結果、規模の大きな噴火では、噴火前に重力が数マイクロガル減少し、噴火の直前に重力値が元のレベルに戻る、という傾向が共通して見られました。 この重力変化の理由としては、火道内部におけるマグマ準備過程によるものと考えていますが、他の測地データ(傾斜伸縮データなど)と比較することで更なる考察を進めていく予定です。


図4 : 2013年9月26日の噴火前後に桜島有村で観測された相対重力変化

​今後の展開

​冒頭でも述べましたが、バネ式相対重力計は連続観測に用いられることはそれほど多くありません。 最近では「使用していない相対重力計がうちの研究室に眠っている」などという話を聞くこともありますので、このような相対重力計を火山地域に複数箇所展開すれば、火山内部の質量移動をこれまでよりも精度良く把握できるものと期待されます。 そのためには、各研究機関にある相対重力計の動作確認を行い、火山での連続測定に適しているかを見極める必要があるでしょう。


図5 : CG-3M重力計の比較連続測定の様子。2016年4月18日、茨城県石岡市にて。

関連論文・リンク

  • J. Hinderer, D. Crossley, R.J. Warburton (2007): Gravimetric Methods - Superconducting Gravity Meters. In: G. Schubert (ed.), Treatise on Geophysics, Volume 3: Geodesy, 3.04, 65-122. LINK
  • 風間卓仁, 栗原剛志, 山本圭吾, 井口正人, 福田洋一 (2016): 2015年8月15日桜島膨張イベント時にCG-3M重力計で観測された相対重力および傾斜の連続的な時間変化. 火山, 61(4), 593-604. LINK
  • 風間卓仁, 栗原剛志, 山本圭吾, 井口正人, 大久保修平 (2016/05/22): 桜島有村における相対重力連続観測:傾斜および重力データの擾乱補正. 日本地球惑星科学連合2016年大会, SGD22-02, 千葉県千葉市 (oral).
  • 風間卓仁, 山本圭吾, 井口正人 (2016/05/24): 桜島有村における相対重力連続観測:ダイク貫入イベント時の傾斜・重力変化. 日本地球惑星科学連合2016年大会, SVC47-04, 千葉県千葉市 (oral).
  • 栗原剛志, 風間卓仁, 山本圭吾, 井口正人 (2016/05/24): 桜島有村における相対重力連続観測:噴火前後の短期的な重力変化. 日本地球惑星科学連合2016年大会, SVC47-P34, 千葉県千葉市 (poster).

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