研究室所属前の準備
学部4回生や修士大学院生として測地学研究室に所属することを決めた場合、 測地学の研究に早いうちに馴染むためにも、以下のような準備を事前にしておくことをお勧めします。 (以下の情報は随時更新しています。)
(1) 測地学関連の入門書を読む
測地学は読んで字のごとく「地球の形や大きさを測定する学問」のことですが、 地球物理学の諸分野(地震学・火山学・陸水学など)と関連して様々な研究が行われています。 測地学を概観するには以下の書籍・サイトが参考になりますので、研究室配属前に必ず勉強しておいてください。
- 地球が丸いってほんとうですか? : 内容は少し古い(2004年刊行)ですが、測地学に関する話題が一般向けに分かりやすく記されています。現在でもAmazonなどで古本を購入することができます。
- 測地学テキスト : 上記の書籍よりも専門的に、測地学に関する話題が記述されています。第1章~第3章を一通り読むことを推奨しています。
- 現代地球科学入門シリーズ (8)測地・津波 : 2013年刊行の測地学の入門書です。周辺学問として (6)地震学 および (7)火山学 を合わせて読むと良いと思います。
(1)' 測地学関連の専門書を読む
上記(1)の書籍・サイトの内容を理解できた方は、以下の英語の教科書を読んでみてください。 どの教科書も測地学研究室の輪読教科書に採用されていて、下に行くにつれて専門的になっていきます。
- Torge and Muller (2012) "Geodesy"
- Turcotte and Schubert (2014) "Geodynamics"
- Segall (2010) "Earthquake and Volcano Deformation"
- Hofmann-Wellenhof (2006) "Physical Geodesy" (※西, 2012による日本語訳もあり)
(2) 測地学関連の授業を受講する
測地学の研究を行う際には、数学・物理学・地球物理学に関する様々な知識を必要とします。 京都大学の全学共通科目や理学部科目では、事前に以下のような講義・演習を履修しておくと良さそうです。 なお、地球惑星科学専攻ウェブサイト記載の コースツリー も参考にしてください。
- 数学 : 微積分・線形代数・統計学 (誤差論を含む)・フーリエ解析
- 物理学 : 古典力学 (ニュートン力学・解析力学)・物理数学
- 地球物理学 (1回生向け) : 地球の物理・地球科学実験
- 地球物理学 (2回生向け) : 地球連続体力学・観測地球物理学 (+演習)・計算地球物理学 (+演習)
- 地球物理学 (3回生向け) : 固体地球物理学・弾性体力学・地球物理学のためのデータ解析法
- 地球物理学 (4回生向け) : 測地学・地震学・火山物理学・地球熱学・陸水学
(3) 計算機に慣れる
4回生以降の研究では、主にUnix系のシステムを用いてデータ解析や数値計算を行います。 この際には、自分でプログラムを作成したり、既存のプログラムをチューニングしたりすることが多いです。 このような研究作業を円滑に進めるためには、Unix計算機に慣れておく必要があります。 計算機演習やデータ解析系の授業を受けることで、以下のような技能・経験を身に付けておいてください。
- Unixの基礎的なコマンドが使える
- 任意の言語 (Fortran, Python, Cなど) でプログラムが書ける
- サブルーチンやライブラリを用いて複雑な数値計算 (逆行列計算, スペクトル解析, 差分計算など) をした経験がある
- LaTeXを用いて文書を作成した経験がある
(3)' 計算機環境を構築する
研究室に所属する学生にはパソコン (基本的にはWindows OS) を1台貸与しています。 上記(3)の技能・経験を既に習得している方は、以下の環境を構築しておくのが良いと思います。
- Unixコマンドを使用するための環境
- Windows PC を使っている場合には Windows Subsystem for Linux (WSL) または Cygwin を推奨します
- デュアルOS や 仮想OS は推奨しません (メインOSとのデータのやり取りが面倒なため)
- Unixコマンド一式
- 例: gfortran, python, gcc, awk, gnuplot, ImageMagick
- WSLの場合は "sudo apt" コマンドでパッケージを追加できる
- TeX環境
- 例: W32TeX + dviout + Ghostscript + GSview
- abtexinst を用いると上記のTeX環境を一括で簡単に構築できる
- WSLやCygwinに内包してあるTeXを使ってもOKです
- 地図やグラフを描画するためのコマンド群 GMT
(4) 日本語の書き方を学ぶ
学部1回生~3回生の皆さんはレポートを頻繁に書いてきたはずですが、レポートの書き方をしっかり学んだわけではないと思います。 しかし、4回生~修士になると学会発表の事前準備として日本語のアブストラクト (予稿・要旨) を投稿する機会が増えてきますし、 本研究室では修士のうちに日本語論文を投稿することを1つの目標にしています。 自分の研究を他の研究者に分かりやすく伝えるためにも、日本語文章の書き方を早いうちに習得しておいた方が良いでしょう。 ここでは、日本語の文章 (レポート, アブストラクト, 論文など) を書く上で参考になる文献を列挙します。
- 大塚昭義 (2003) "学術論文のより良い書き方" LINK
- 木山泰嗣 (2011) "もっと論理的な文章を書く" LINK
- 佐渡島紗織・坂本麻裕子・大野真澄 (2015) "レポート・論文をさらによくする「書き直し」ガイド" LINK
- 福地健太郎・園山隆輔 (2019) "理工系のためのよい文章の書き方" LINK
(なお、博士課程に進むと英語の論文を出版することが必須となります。 英語論文の書き方については沢山の書籍が売られていますし、修士課程以降に訓練すればよいと考えます。 ですので、ここでは英語論文の書き方については詳しく言及しません。)
(4)' 口頭・ポスター発表の心得を知っておく
学部4回生~修士になると、自身の研究や先行研究の論文紹介の際に、PowerPointやKeyNoteで発表内容をまとめることが増えてきます。 また、修士に進むと学会発表の機会が増えるので、発表スライドや発表ポスターにおいて研究内容を端的に分かりやすく伝えることが重要になります。 発表をうまくこなすにはある程度の経験が必要ですが、発表のノウハウを事前に知っておくと早いうちから発表に慣れることができると思います。
例えば以下の書籍にはプレゼンを行う上で有益な情報がたくさん書かれていますので、ぜひ読んでみてください。 1冊目 および 2冊目(の第3部以外の部分) には学会発表やスライド作成に関する全般的な情報が、 2冊目の第3部 および 3冊目 にはスライドデザインに関するノウハウが記載されています。