ひずみ・傾斜の測り方
神岡鉱山内レーザー伸縮計設置風景  旧来技術による測地測量は測定に大きな労力を要し、測定の繰り返しには数年から数ヶ月を要するのが普通でした。このため、地殻変動の進行状況を高い時間分解能で知ることは不可能であり、また、地表での測定は気象条件等に左右されることから、測定精度にも限界がありました。

 これらの弱点を補うため、ひずみ計や傾斜計といった計器を用いて連続的に高感度の地殻変動観測を実施することが、古くより行われています。これらの観測では、地球潮汐の現象まで捉えることができます。ただ、その信号の大きさは10-7程度の振幅であり、たとえば10mの長さに対しては数ミクロン(μm)ほどの変形でしかありません。しかも、これを精密に捉えるためには、さらに1〜2桁高い測定分解能が必要となります。
 通常の物質の熱膨張係数は10-3〜10-4/℃の値であることを考えれば(温度が1度変化すると10mの地面は1cm〜1o伸び縮みするということ)、このような観測を温度変化の大きな地表で実施することは不可能です。このため、地殻変動連続観測用の計器は、温度の安定した横坑の奥や深い井戸の底部に設置されるのが常です。横坑の内部に設置される代表的な地殻変動連続観測計器としては、伸縮計と水管傾斜計があります。

 伸縮計は、文字通り2点間の距離 L の伸び縮み儉 を測定して、線ひずみ儉/Lを求めるものです.L が長いほどひずみの測定感度は高くなりますが、通常20〜30mの長さの計器が用いられます。機器の原理は簡単で、剛体とみなせる棒や管の一端を台座に固定し(固定端)、その他端ともう一方の台座(自由端)との間の微小な距離変化をセンサーで捉えるものです。棒や管の材質としては、温度膨張係数の小さな溶融石英やインバール等が用いられますが、その重量は相当なものになるため、1〜2mごとに棒や管を支える支持機構が取り付けられます。

 最近では剛体棒の代わりにレーザーを用い、レ−ザー光の干渉を利用して2つの台座の距離変化を検出するレーザー伸縮計も使われています。
レーザー伸縮計の完成予想図  測地学講座では現在、神岡鉱山内に大規模なレーザー伸縮計の設置を進めており、その最新鋭のレーザー伸縮計により、地球内部―内核、外核、核-マントル境界部のダイナミクスを解明しようと試みています。超伝導重力計とレーザー伸縮計を組み合わせた研究をしてみたい方はぜひ測地学講座へ。
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